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デザイナー人生60年 集大成は「死装束」(産経新聞)

 ■小説「女の勲章」のモデル、近藤年子さん 

 作家、山崎豊子さんの小説「女の勲章」のモデルにもなった服飾デザイナー、近藤年子さん(89)=大阪府吹田市在住=が、最後の作品となる自らの死装束を仕立てた。「私に葬儀屋さんの白装束は似合わない」と色鮮やかなドレスをデザイン。戦後の関西の服飾界を牽引(けんいん)したデザイナーは“旅立ちの祝衣”を片手に現役引退後の余生を送る。

 近藤さんは大阪・船場生まれ。戦後、大阪大空襲で焼け残った自宅の2階で、近所の若い女性を集めて洋裁塾兼店舗を開き、占領軍兵士の婦人たちのドレスを縫いながらデザイナーとして自立した。

 山崎さんがまだ毎日新聞の記者だった時代、毎週末に仕事場で取材を受け、服飾界の最新の動向や自身の生い立ちなどを語った。山崎さんとは「おとよさん」「こんちゃん」と愛称で呼び合い、山崎さんが作家として独立後も親交を深めたという。

 デザイナーとしては、昭和25年に大阪市内でファッションブランド店「TOSSY(トッシー)」を設立。オーダーの店舗と合わせ現在は店舗を閉めたが、社団法人「総合デザイナー協会」参与を務める。

 デザイナー歴60年を迎え、これまでに数千着余をデザインし縫い上げた。しかし近年の老いの自覚から昨年末、引退を決意。「最後の作品は、自らの人生の最後の舞台を演出する洋服に」と自分のための死装束のデザインに着手し、約3カ月がかりで、金色を下地にしたヒョウ柄のツーピースのドレスを作り上げた。

 「晴れの日が着古した浴衣や合繊ではさみしい。死装束は人生の延長線上として考えて、美的でおしゃれでありたい」と近藤さん。

 「死装束を作ったからといって、まもなく死ぬ予定はありません」といって笑いながら、「あと何年生きるか分かりませんが、余生は読書や音楽を楽しみたい。終わりも含めてこそ、自分の人生と思う」と話した。(植木芳和)

                   ◇

【用語解説】女の勲章

 山崎豊子さんの長編小説。昭和35~36年に毎日新聞で連載。大阪・船場生まれの若く美しい主人公が、空襲で亡くなった両親の遺産を基に小さな洋裁学校を開き、学校経営者、デザイナーとして大成を目指すものの、女のプライドと欲望を利用した男性マネジャーに3人の愛弟子を手玉に取られ、次第に翻弄(ほんろう)されてゆく生涯を描いた。実在するデザイナーの近藤年子さんや上田安子さん(故人)がモデルになったという。

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